詐欺という言葉で心臓移植募金の問題点が隠れてる

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【詐欺確定!?】心臓移植は行いません!ほのかちゃんを救う会 : 【2ch】ニュー速クオリティ


この手の問題は、論理より感情論のほうがわかりやすく、議論が難しい。
「じゃあこの子に死ねというのか!」と言われるとそれだけで場を制圧してしまいがちだし、攻める方もその空気に対し「詐欺」と言う観客の理解しやすい飛び道具で戦いがち。
それでも、ここは問題点を整理しておくべきだと思う。
詐欺かどうかという、あまり本質的ではないポイントで議論が消費されて、根本的な問題が取り上げられないのはもったいない。


そもそも海外移植には、日本の法律で禁じられた行為を海外に丸投げする事への是非論がある。
日本で小児患者の移植が認められないのは、極端な言い方をすれば、心臓移植という、一人の人間を「殺して」一人の人間を生かすという行為が、特に小児に対しては生命倫理に反するかもしれないという恐れがあるから。
当然、確率的に予後の悪い患者が移植元ドナーとして選択されるんだろうけど、医療は万能じゃないから、予後を100%判断できる訳ではない。
実際、脳死判定された後に生き返った例だってゼロではない。
特に、若いという事はそれだけ回復力があるという事でもあるから、その手の奇跡が起こる確率は年輩者より高くなる。
でも、そこを割り切らないと移植は進められない。ここにジレンマがある。


海外には、別に心臓工場がある訳じゃない。
そこにいるのは、生存確率が低いと判定されたドナーだ。
当然、そのドナーにだって関係者はいる。
国外だからって、親子の情が無くなる訳じゃない。その国にはその国の倫理があり、ドナーへの感情がある。
それなのに、「この国では認められているから」で自国では解決もしてない問題を放り投げることは正しいのかどうか。


また、この手の問題に外部から市場原理を組み込む事への問題もある。
法律的に移植が認められた国ならば、当然国内にもドナーからの提供を待つ患者がいる。
そこに、別の国からやってきた外国人が、いきなり大枚はたいて場代を吊り上げてしまう訳だ。
医療だってコストは掛かるんだから、選択肢があれば払いのいいほうを選んでも不思議はない。
このことで、日本国内から見えない患者の機会損失を招いている可能性がある。


こういった事柄は、当事者ならイヤでも対面せざるを得ない。
しかし、両親は、目の前の子が死にそうだという厳然たる事実の前に、手をこまねいていられないというジレンマを抱える。
苦渋の選択をせざるを得ないこともあるし、理解していててもリスクを取らざるを得ない事もある。
どちらにしろ、前提として移植の前に横たわる多くの問題を突きつけられる訳だ。


でも、募金する人や募金を主催する人は、必ずしも当事者ではない。


この手の募金に対してもにょるのは、当事者以外に対し、そういった根本的な問題を覆い隠してしまいがちだから。
そら、募金というシステムが「金と満足を引き換えにするWin-Win関係」という形を取る以上、最初のポイントでいちいち問題確認なんてしてたら成立しないってのは理解している。
が、こういった問題に対して、感情論を最大限に利用し、無数の人の小さな「肯定」だけで突き進んでしまうのは怖い。


こういうのはゴチャゴチャ言わずに「助かった?良かったね」ぐらいですませられりゃいいんだろうけれど。
その態度が、実は見知らぬ人にリスクを負わせてるかもしれないという「怖さ」を感じてもバチはあたらないんじゃないかと。