id:fromdusktildawnの就職氷河期の話に突っ込みどころが多い件


2008-02-26
2008-02-27

に対するid:fromdusktildawnのこの回答。
氷河期の猛吹雪にズダボロに引き裂かれた人々と、グングン成長した人たち - 分裂勘違い君劇場 by ふろむだ

ここでは、日本の深刻な景気の冷え込みの時期に過酷な労働やサービス残業を強制されたり上司からパワハラを受けた平社員の世代という広い意味でとっている。その時期に失職したり、転職したりした若い人も含む。この時期に既に大企業などで既得権益を確保して安全地帯にいたそれより上の世代は除く。子飼弾氏は1969年生まれで、この時期に正社員の既得権益など持ってはいなかった。

これはさすがに言葉を再定義しすぎ。
氷河期って、前後の話だと就職氷河期時代の事を指すんだから、就職氷河期に直面しなかった人まで含んだら話が滅茶苦茶になる。


というか、この引用文だけでも、あの時の「就職」というモノに対する価値観のズレを感じる。
国立の院生の就職率が50%切ってた時代に正社員10年目ってそれだけで十分すぎるほどの既得権益ですよ!


簡単にいうと、id:dankogaiを「氷河期を乗り越えた人」として扱うなという事。


後半の論もちょっといただけない。

トヨタの自動車には80個ものマイクロプロセッサが組み込まれ、合計700万行のソースコードが使われている。

ソニーの携帯電話には、500万行のソースコードだ。

JRの改札口だって、原子炉だって、ダムの制御だって、自販機だって、建築設計支援システムだって、ありとあらゆるものが膨大なソースコードの塊になっている。

最近の戦闘機など、もはやコンピュータの固まりに周辺機器をつけて空を飛ばしているようなものだ。

そして、ますます高度化していく乗り物や家電の付加価値のかなりの部分がソフトウェアだ。

今後ますますソフトウェア技術者が必要だ。


トヨタ自動車では1万人のプログラマーが働いているが、あと1万人足りないと言う。
そして、自動車や家電だけではなく、ありとあらゆるモノやサービスがますます情報化されていく。

ますます多くの雇用が生み出されていくだろう。

俺の手元に、「クライシスシンドローム」という本がある。
俺がこの業界に入るきっかけの一つになった実に罪深い本なんだが、この本から引用。

(前略)〜1986年、情報化人材対策小委員会が設置された。そしてそこで、「2000年のソフトウェア人材に関する調査研究が行われ、2000年には97万人のソフトウェア技術者の不足が起こる」という予測の事を指していた。

クライシスシンドローム(須崎 一成 著) p073 「ソフトウェアクライシス」について

要は、ソフトウェア技術者が足りないなんて話は昔からいつの時代でも言われてる話だったりする。
ただし、それはその時その時の需給バランスを元にした予測でしかない。
実際、2000年がどういった状況だったかはこの業界の人なら大体わかっているはず。


「クライシスシンドローム」の著者は、(この本が書かれた平成5年当時)この予測があたらないのではないかと推測している。

予測では、ソフトウェア技術者が大量に不足するという。それは、需要に対して供給が不足するということだ。
ある商品について考えるとき、需要が本当に強く、供給が需要を賄えない時、価格は上昇する。価格が上昇すれば、その商品の利益が上がることになるので、その商品を生産する業者が増え、供給が増える。そして需要と供給が均衡するというものだ。(中略)
これをソフトウェア技術者に当てはめれば良い。
クライシスシンドローム(須崎 一成 著) p074-75

需要が高まれば一時的に技術者の価値が高まるが、その後揺り返しで供給が増えれば需給バランスは保たれてしまうと言う事だ。
これは、揺り返しが大きければ逆にバランスが反対側に倒れ得る事も意味している。
今現在、需用が高い現場の人間は強気に出れるかも知れないけど、今後10年後需要が反対に振れた時、そのときの新卒は強気に出れるだろうか?
というか、その構図こそがバブル時代と就職氷河期時代の人間関係の構図なんじゃないか?


そら、今現在は新卒に対する求人倍率は高いかもしれないけれど。
齢30を越えた人間に対する中途採用倍率はどうなのかと。
今現在の求人倍率の高さは、あの当時の就職氷河期に直面した人間を救わない。


あと、こういう「ソフトウェアはどこでも使われるからプログラマは食いっぱぐれない」論の凄く間違ってる感は、開発系の人間なら組み込みに限らず感じると思う。
製品サイクルとか、技術寿命とか、コード転用とか、そういうものを考慮している感じが全然しない。
「あなたの会社の古いソースコードのうち、作成者が未だ社内に残っているコードはどれぐらいあるか?」


それと、こういう話は、条件を同じにしての「検証」が絶対に出来ないということは踏まえておいた方がいい。
個人体験談バトルは不毛ですよ!